VOCA2008

  • 2430x2465mm 01/11/2007

    2430x2465mm 01/11/2007

     山内崇嗣の関心は主に三つある。まずはよく知られた「あひるとうさぎ」のだまし絵が示すような問題。一つの図柄が交互に二つの異なるイメージに見える、というものだ。もう一つは日本近代洋画の問題。そこでは西洋絵画のモチーフやマチエールを援用して、同時にどうしようもなく「日本」の匂いがする絵画が生み出されてきた。最後の一つは絵画の根本に関わる問題である。平面でありながらそこに奥行きや立体感が認識される、また平面といいながら厚みも手触りもある物体として絵画が存在する、といったことだ。これらはいずれも、結論が何かと何かの中間に宙吊りとなっているところに共通点がある。
  •  さて、出品作の前景に大きく描かれるのはオニグルミの冬芽である。冬を越して春の生長を待つ芽のことで、しばしば人の顔に似た形をとる。つまり植物と顔との中間だ。またヤニっぽく油光りする画面は、山内が好んで言及する岸田劉生のように、古風な西洋絵画風で、同時にどこか泥臭い日本近代洋画風だ。前景のオニグルミ、中景のベタな日本の住宅、そして遠景の初期ルネサンス風の山の、計三つの層によって、画面には奥行きが作られているが、白いドリッピング様の塗り残しに目をやったとたん、絵具としての物質感が際立ってきてこの奥行は打ち消され、画面は平面化する。ユーモラスなモチーフを描いて一見取りつきやすく見えながら、画面にはいつまでも結論の出せない問いが、幾重にもこめられている。そして、決定不可能だからこそ絵画の謎と魅惑が凝縮して宿るこの絶妙な宙吊り地点をねらって、山内は、その抜群の描写力を注ぎ込むのである。
    2008|VOCA2008|the ueno royal museum

    2008|VOCA2008|the ueno royal museum

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